後見人とご家族間で生じるトラブルとは
超高齢化社会といわれる昨今、ご自分やご家族の「もしも」に備えて生前対策を講じておくべきと考えている方は増加傾向にあります。
とくに高齢になると気になるのが認知症の発症であり、発症してしまった場合にはこれまで通りの生活を送ることも、ご自分の財産を管理することも困難になることは明らかです。
そうした「もしも」の備えとして検討されることの多い成年後見制度ですが、認知症を発症した方のご家族と後見人との間でトラブルになるケースも少なくないのが現状です。
実際にどのようなトラブルが生じているのか、あらかじめ把握しておけば回避することも可能ですので、成年後見制度におけるトラブル例についてまずはご説明いたします。
要注意!成年後見人とのトラブル例
成年後見人の役割とは、認知症等を起因とする判断能力の低下がみられる方の財産管理や生活支援等を代行することです。しかしながら成年後見人のなかにはその役割をきちんと果たしていない方も残念ながら見受けられます。
よくあるケースとしては以下の通りです。
- 成年後見人が対象者の財産を使い込んでしまう
- 成年後見人が適正な財産管理を行っていない
- 成年後見人が家庭裁判所に対する報告を適切に行っていない 等
なかでも多くみられるトラブルは、成年後見人による財産の使い込みです。
成年後見人の業務が始まるのは対象者の判断能力が低下してからとなるため、管理すべき財産を着服・横領しても気づかれることはないとわかったうえで行為に及んでいると思われます。
後見人を監督する立場である後見監督人やご家族・ご親族、家庭裁判所の指摘によって財産の使い込みが判明した場合、解任されるのはもちろんのこと、横領罪にあたるとして逮捕される場合もあります。
成年後見制度は認知症対策として有効ではあるものの、このようなトラブルが生じてしまう可能性も否定できません。財産の使い込みを防ぐためには、信頼できる方を成年後見人に選ぶことが重要です。
トラブルを回避するための予防策
成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」という2つの種類がありますが、任意後見制度を利用すれば、ご自分が信頼できる方に財産管理や生活支援等をお願いすることができます。
任意後見制度では後見人が契約内容にもとづいて適正な業務を行っているかについて、家庭裁判所が選任した任意後見監督人がチェックをします。
それゆえトラブルが生じる可能性は低く、かつ信頼できる方が後見人に就任しますので、ご自身はもちろんのこと、ご家族やご親族も安心して任せられるといえるでしょう。
また、「任意制度支援信託」を利用することでもトラブルの回避が可能です。
任意制度支援信託とは、日常生活で必要となる分の財産の管理を後見人が行い、その他の財産は信託銀行等に預ける制度のことをいいます。
信託銀行等に預けられた財産の払い戻しや契約解除は家庭裁判所の指示書がないと行えない仕組みとなっているため、後見人による着服や横領が生じる心配もありません。
成年後見人による使い込み等のトラブルが生じていることは事実ではありますが、このような予防策をあらかじめ講じておくことにより回避することは十分可能です。
生前対策のひとつとして成年後見制度を検討される際は、これらのトラブルが起こり得る可能性についても考慮することを心がけると良いでしょう。