任意後見人の解任と辞任
認知症等により判断能力が不十分となった方の権利保護と支援を目的とする成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」が設けられています。
任意後見制度では信頼できる方をご自身で前もって後見人に指定しておくことが可能であり、この制度により指定された方を「任意後見人」といいます。
任意後見制度を利用する際は誰を後見人にするのか、その方に何をお願いするのかを明記した契約書を公正証書にて作成し、「任意後見契約」を締結します。判断能力が不十分となった時点ではこの契約を締結することはできないため、お元気なうちに行うことが重要です。
家庭裁判所が後見人等を選任する法定後見制度と異なり、ご自分の意思で後見人を決められる点が任意後見制度の最大のメリットです。
しかしながら、ご自分で指定した任意後見人が契約内容通りに財産管理等を行ってくれないケースも少なくありません。その場合には任意後見人の解任を検討する必要もあるといえるでしょう。
ここでは任意後見人の解任についてご説明するとともに、任意後見人が辞任する場合についてもお伝えいたします。
任意後見人の解任について
任意後見人としての業務開始は、被後見人(ご本人)の判断能力に低下がみられた際に家庭裁判所へ申し立てを行い、それを受け「任意後見監督人」が選任されてからとなります。
任意後見監督人とは、任意後見人が契約内容にもとづいて適正な業務を行っているかどうかを監督する立場となる存在であり、任意後見人を解任する権限を有しています。
任意後見人が被後見人の財産を勝手に使用したり、任意後見監督人や裁判所等に対する報告義務を怠っていたりと、任意後見人に適していないと思わる行為などがあった場合には解任することができます。
解任の請求は任意後見監督人のほか、被後見人やそのご親族、検察官にも認められています。
任意後見人の辞任について
成年後見制度は判断能力が不十分となった方の権利保護と支援を目的とすることから、任意後見人の意思だけで自由に辞任することはできません。任意後見人が辞任するためには家庭裁判所へ申し立てを行い、「正当な事由がある」と認めてもらう必要があります。
正当な事由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 遠方に転居しなければならない事情があり、職務の遂行に支障が生じる場合
- 高齢である、病気を患ったなど、職務の執行が困難となった場合
- 被後見人やその親族等との関係が悪化し、職務の遂行が困難となった場合
- 任意後見人としての職務が長期化し、過重な負担となっている場合 等
上記のような正当な事由があったとしても、家庭裁判所の許可を得なければ辞任することはできないため注意しましょう。
なお、辞任によって被後見人の権利保護に支障が生じることがないよう、辞任の申し立てをする際は成年後見人選任の申し立ても行います。それにより、辞任の許可を得た場合には被後見人の財産を新しい後見人に引き継ぐことができるようになります。
任意後見制度はご自分の意思で後見人を指定し、その方と任意後見契約を結ぶため、「解任や辞任するケースは少ないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
しかしながら多額の金銭が絡むとなると、残念ながら予期せぬことが起こる可能性は否定できないものです。
認知症等により判断能力が不十分となってしまった場合に契約内容通りに職務を遂行してもらえないと、結果的に不利益を被ることになるのは被後見人ご自身です。
そのような事態を避けるためにも、誰を後見人に指定するべきかについては慎重に検討されることをおすすめいたします。
任意後見制度に関するお悩みやお困り事がある際は、生前対策を得意とする司法書士が在籍する「堺なかもずシニアの相談窓口」までご相談ください。
将来に対する不安を解消できるよう、豊富な知識と経験を有する専門家が懇切丁寧にサポートいたします。